「仏に対して香・華・燈明・飲食などの供物を奉献して礼拝したり、心を浄めて信じること」で御座います。いずれにしても、覚者である仏陀(如来)への帰依を表すための行為です。
しかし、仏教では輪廻転生を説くのに何故、先祖供養を行うのでしょうか。
『大般涅槃経』の中で釈尊が阿難尊者に対して、”シャーリラープジャ”(遺体処置方法)を伝えます。
「遺体を荼毘に付したあと、遺骨塔(卒塔婆)を建立し、先述の供養の如く供物を捧げ、清浄な心をもって礼拝をしなさい。」
ここで供養される対象は、如来・応供(阿羅漢)・正遍知などの仏陀を指しています。それでは現在、日本で葬送儀礼や廻向供養を覚りを得た者以外の在家者(出家でない人間)に対して行うのはどの様な道理でしょうか。
真言宗の引導作法(葬儀のお作法)では、死後の魂に対して出家・受戒を執行して仏道修行者とします。また、読経を通じて、導師を勤める僧侶が仏の教えを説き授ける訳で御座います。ここまでが顕教の出家者の段階です。ここから密教修行者に必要な三密(身・口・意)の行を授けます。これを授けることを許されるのは、伝法灌頂を授かった阿闍梨でなければなりません。厳密に言えば引導印信は一流相承分になりますので、伝灯大阿闍梨でないといけません。
そして、四十九日かけて修行に励み、その功徳善根にて晴れて密嚴浄土(大日如来の坐す浄土)に転生し仏陀になるのです。
故に、”覚りを得て仏陀となられた先祖”に供養礼拝を捧げるというのが仏教の根本で在ります。
同経典では仏陀(覚りを得た者)に卒塔婆を建立して、懇ろに供養礼拝することで、(供養礼拝をした者が)亡くなり肉身を失った後に、天界へと生まれ変わることができるとも釈尊は仰られています。
当寺では、本尊と諸尊(お祀りする仏さま)供養の一環として、諸霊位(先祖)の供養を勤めさせて頂きます。合せて塔婆建立の善行をすることで、正しい仏教の供養の形を守りながら、真言密教の修法により供養致します。